長文レポのサンクチュアリ
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●「浅草艶絵巻 新春公演」レポ

2017年1月19日(木)・20日(金)、浅草リトルシアターに行って艶絵巻を見てきました。
今年から毎月8日間の公演になったようです。今回(13日〜20日)の演目は1芋虫2裏紫3夢十夜4金色夜叉
の4本立てでした。以下、各作品の印象を簡単に。

1芋虫(江戸川乱歩原作)出演:黒崎優、森健太郎
新作です。暗転の中、分列行進曲が流れ、
少しして照明がつくと、出征する須永中尉(森)と見送る妻の時子(黒崎)「生きて帰ってください」
暗転。すぐ血のように赤い照明。激しい銃撃戦。果敢に闘う夫。そして被弾。
が、本当の地獄はこのあとです。
少しコミカルとも思える展開に最初は戸惑いましたが、
これがかえって現実の悲惨さをあぶり出していきます。
しだいに精神が崩壊していく妻…
原作が発表されたのは昭和4年ですが、
反戦、介護、そして介護する人のケアなど、今日的な問題をのど元に突きつけてくるようです。

2裏紫(樋口一葉原作)出演:灯月いつか、小枝ノリユキ
12月の再演です。申し分のない夫を持ちながら不倫に走る妻の心の葛藤。
裕福で優しい夫は小枝氏のはまり役。
いつかちゃん、人妻らしい紫の着物がよく似合っています。
劇中歌で「I am GOD'S CHILD この腐敗した世界に堕とされた…」と熱唱するところは
いっさいの罪を一身に背負ったような崇高さがありました。

3夢十夜(夏目漱石原作)出演:牧瀬茜、森健太郎
11月の再演だったと思います。牧瀬さんの脚本による現代的な物語が加わり、これによって原作の幻想的な性格・スケール感が更に深まるという心憎い演出。黒っぽい地味な普段着から赤いセクシーな衣裳へ、そして空色のドレスへと衣裳の色の変化も何だか象徴的です。ラストの清らかでちょっとオリエンタルなダンスも素敵でした。 

4金色夜叉(尾崎紅葉原作)出演:朱魅、大橋健太郎  
新作です。暗転の中、大正琴だったか「今宵出船の…」のメロディが日本情緒たっぷりに流れます。そして波の音。
照明がつくと貫一とお宮。熱海の海岸の場面です。  
大橋氏、貫一を暗く破滅的に好演。その熱量がすごい。
いっぽうお宮の朱魅さん動揺する女心〜純粋さと弱さ〜を演じきります。
大量の台詞が出てきますが、しかし圧巻は台詞ではなく
ラストの倒れる場面です。ドラクロアの絵画を思わせるような。
そのあと「…たての糸はあなた…」というあの歌に乗っての踊りには
すべてを浄化するような救いがありました。  

上演時間約90分。外に出ると、寒い〜(笑)

- 01/25 13:16
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