晃生ショー
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●2014年8中晃生他RiN嬢




遥かなるベオグラード、ドナウ河畔から見た沈みゆくあの夕陽−(0)−京

荘重に響くパイプオルガン、ベール被り純白のウエディングドレスに身を包む君は
盆から前へ進み出る−暗転−

僕は君の手を引き、ただ一心にオーロラの見えるあの北欧最北端の町の教会を目指した−(1)−垓

町中に鐘の音響き渡る−ベース低く響きピアノの鍵盤を子鼠が走り抜ける。
満天の星を鏤めた黒のパンツルック、白シャツに黒のネクタイを緩く結び、
スモークたちこめるフロアにて、身体を開きつかの間の自由を謳歌するごとく君は裸足で舞う。
軽やかに、伸びやかに、跳ねるごとく−(2)−杼

チトー率いるパルチザンがこの国を解放した後、街にて開かれたショーパブでは、
調和するもの・対立するものが復興を目指して議論を重ねた。
そのフロアの隅で僕はただ読書と思索にあけくれ、光とは何か、その正体を追い続けた。
その心は常にフロアにて舞う君の姿を追い求めた−(3)−穣

「きみは面白い疑問を持つね」教授は窓枠を通して樹木を眺めたまま僕に語りかけた。
光の本質はその生成よりも消滅にある主張する教授の部屋を好んで僕はしばしば訪れた。
元枢軸側の極東の国の不思議な博士は核力の作用範囲からπ中間子の存在を理論的に予想した。
π0中間子の寿命は極めて儚く、光子2つに崩壊する。
「その儚さにより我々は光が美しいと感ずるときみは云う。
科学的であることと非科学的であることを区別することも科学の重要な役割だと思うがね」
教授は行く末を憂うように僕の眼を覗き込んだ−(4)−溝


耳を劈くドラムの音−少ない稼ぎの中から僕が贈った黒のネックレスを踊る君の胸に認めた。
ピアノ不協和音を響かせ−暗転−

チトーの死後精神的支柱を失ったこの国は再び内戦に陥り、ひとびとの心は分裂し、
かつての自由も調和も今はない。あの教授は職を辞したとも伝え聞いた−(5)−澗

−永遠なんて言葉知らなかったよね−オーロラ青く光り、無垢極めるウエディングドレス纏う君は
ベール被りブーケ手に、光の海を泳ぐごとく舞う。裾翻すたびに起こすさざ波は、
遠き記憶の彼方に君と二人で眺めたドナウの流れなのか先刻渡りしセーヌ川の水面なのか、
それすら僕には分からない−(6)−正

〜"暗い森"シュヴァルツヴァルトの弦楽〜「どうせ打てやしまい」コサックか
枢軸の生き残りかはたまたパルチザンか、兵の唇の端が皮肉帯び歪む。
君の白き吐息を背中に感じながら、抑えがたい憤怒が僕の全身を貫いたとき、
一瞬兵士の顔がこわばったかに見えた。そして兵士の姿は消えていた。
撃鉄が下りたのか、それさえ僕には分からない。再び君の手を引き僕は走る−(7)−載

君は白きビスチェ風ミニドレス纏い袖から風のごとく登場する。
光浴び風集めステージ中央に進み出る君。自らの肩抱き、目伏せ、スピンしつつ消え行く−暗−

君は黙したまま僕に教えてくれた。
イデオロギーの奴隷となることは感情の奴隷になることと等しく虚しいことだと−(8)−極

幕の後ろから現れた君は白薔薇レースにあしらうロングドレスでベットに進み出る。
空を見上げる君は僕とこの宇宙に二人だけ。薬指に光るその指輪。ギター爪弾き、男声語りかける
−言葉にして伝えていないことがあるんだ−三点倒立から左右スプリッツにて着地−(9)−恒河沙

−壁を感じる−枯葉の褥に君を横たえ、肩を抱きうなじ吸い薄い胸を撫で、
薄紅色の胸の突起に歯を立てつつ弓なりに君の腰を反らせた。
朱に染まる瞼伏せ奥歯噛み締める君に僕は、最大の理不尽を強いた。
君を許さなかった僕の与えた苦痛と屈辱を受け入れたことを確かめ、
僕は君の身を静かに横たえ、そっと髪を撫でた−(10)−阿僧祇

−壁を感じる−何度も弓なりにのけぞりスワンのポーズ、ブリッジから立ち裾翻し、
再びブリッジから片脚上げ、ステージ正面にて光浴び天指しラスト−

〜那由他の刻(とき)を越えても君を忘れない〜−END−

京に始まり那由他に終わる、
以上、RiN嬢、晃生ショー劇場2014年8中初見、その他9頭DXT・9結晃生・11頭晃生等にて上演

- 01/05 14:29
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