芦原ミュージック
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●吉行淳之介

本棚を整理していたら吉行淳之介が出てきました。
バタフライ、トルコ風呂等が出てくるので、昭和30〜40年代のようです。
芸者さん(俳優の山本礼三郎に似ている)の案内で芦原の夜を探訪しています。

『ところが、話と違って、この町には遊蕩気分が稀薄なのである。トルコ風呂は一軒もないし、一軒だけあるヌードスタジオに案内されてみると、ここは「芦原ミュージック」と称するストリップ小屋で、きわめておっとり、バタフライも取らずに踊っている。まさに日劇ミュージックホール並みの品の良さで、客もべっに腹も立てずに鑑賞している。ただ、出演の女性が三人とも美女なのに感心した。東京の檜舞台で踊っても恥ずかしくない彼女たちが、この土地にいるのはおそらく奇しき物語の一つや二つはあるとおもえる。

山本富士子風の美女が踊っていると、若い衆が一枚の紙を届けにきた。踊りながら彼女はニッコリ笑って、受け取る。私はカンを働かせて、山本礼三郎嬢に訊ねてみた。
「このあたりに、競輪があるのかな」
「競艇があります」
彼女たちはお座敷に出張もするということで、そのときは全ストになるらしいが、やはり上品な全ストなのだそうである。座敷に私一人あぐらをかいて、差し向かいで一曲踊ってもらうのは面映ゆいのでやめにした。』
                            (吉行淳之介/紳士放浪記) 集英社文庫

- 07/21 23:26
- 私もスケベ   


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