若松劇場
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●五木麗菜さん 2013 8/27 3rd stage

暗闇に沈む本舞台‥その左側だけにライトが当てられている。横長の縁台の端に腰かける‥浴衣姿の「おんな」が一人。傍らには檜の洗い桶、伸ばした腕の先には提灯を提げて。「祭」と大書された提灯の放つ光が照明の当たらない「闇」にぼんやり溶けている。立ち上がると‥ひとしきり優美な舞い。花道を進んで来ると、携えた洗い桶の中で冷やされた飲み物を盆周りの客に振る舞う。涼しげな日本酒の小びん、缶入りのお茶、見慣れた清涼飲料水のパッケージ。浴衣は淡いピンク色の地に小さな花とトンボの柄が散る意匠。足元は軽装履き。髪はアップに纏められ‥背中を向けると腰の辺りに「祭」と大きく書かれた大振りの団扇が挿されている。やがて本舞台へ下がると上半身のみ浴衣をはだけ、その場にしゃがみ込み、身体を燻らせる。下半身を覆う浴衣が下履き風にも見えて‥何だかしどけない。続いての衣装は「おきゃん」な町娘風。オレンジレッドの丈の短い着物姿。グリーンメタリックの布で一部髪を覆っている。花道を進み、盆に至る途中で立ち止まり‥髪をほどく。前髪を下ろし、潤んだ瞳で虚空を見上げるその表情にはあどけない‥少女の匂い。盆に至ると再び前髪を上げ‥額を晒す。同時に目の表情に「凛」とした何かが宿り、それだけで大人の女性の顔になる。ポーズベッドの口火を切るのは‥L。伸ばした脚を愛撫する様に撫で上げる指先も、それを追う彼女の視線も悩ましい。そこから切り返しての〔四つん這い+片脚後方突き出し→シャチホコ〕の3連続コンボ。立ち上がると静々と花道を下がる。その途中で一瞬立ち止まり‥振り返る表情に再び「少女」が宿る。もう一度向き直り‥本舞台に至ると中央に横向きに立ち、大きく背中を反らせる。美しく長い髪が床に届いていた。彼女を包み込む暖色系の照明が「スッ‥」と力を失い、それまでの一切合切がまるで夢まぼろしの様に‥闇に帰する。

- 11/06 03:20
- くるりん


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