2016年11月29日(火)四谷の綜合藝術茶房 茶会記に行って「裸體劇(らたいげき)Japonisme Avant-garde」を見てきました。「裸猿(らざる)Exhibition」シリーズの第3弾で、出演はmio、八巻昭悟、showの皆さん。今回は今までと趣きを変えて「昭和エログロナンセンス」とのこと、でしたが、一言ではとても言い表せない、深くて美しいステージでした。以下、簡単に。
会場に着いたのは午後7時すこし過ぎ、予約してあったので入場料3500円。1ドリンクをもらって奥の部屋に入ります。レトロな隠れ家的なスペースです。もうお客がいっぱいで私は3列目あたりの椅子に掛けました。
舞台(として使う部分)には上手にアップライトピアノ、下手にアンチークな椅子,中央には白い布で覆われたテーブルのようなものが置かれていて上には昔なつかしい紙風船が1つ。
そして舞台奥の壁には
熱、剣、炙、焦、火、獄、寒、針、血、などの文字が筆でなぐり書きしたように乱雑に貼られています。ただごとでない雰囲気です。何が始まるのか。
そうこうするうちに7時半になり、場内後ろの方でスタッフらしい男性が
「本日はようこそ…」と簡単なご挨拶と写真撮影の禁止などの注意。それが終わると
少しして場内の照明が消えていって真っ暗に。
カーン、カーンと
教会の鐘の音。
ここで下手から人影が。照明がつくと
白い上衣に黒い袴のshow君が小さな縦笛で「夕焼け小焼け」を悲しげに吹きながら入ってきます。その後ろをmioさんが濃い紫の着物に赤い帯で、可憐に伏し目がちに続きます。手に小さなトライアングルを持って時々鳴らしながら。
その後ろを、金色の着物で手にガチャガチャを持った八巻氏。行列は異様にゆっくりと歩いてきます。3人とも無表情。
シュールでありながら、どこかなつかしいような、野辺送りのような。
こんなふうに始まります。
そのあとmioさん舞台奥に行って
子供のように
八巻氏とお手玉遊びのようなことをやったり
紙風船を投げ合ったりして無邪気に笑っています。
少ししてmioさん
本を持ってきて
「げどうさいもんキチガイじごくぅー
さてもじごくをどこぞととえばー…」
と朗読を始めます。
元々のきれいな声をおし殺したような、絞り出すような声です。
後で聞いた話では、これは夢野久作(1889〜1936)の小説「ドグラ・マグラ」の「キチガイ地獄外道祭文」の一節だそうです(角川文庫「ドグラ・マグラ 上」p141あたり)。
そしてここから地獄図絵のように。
3人のたうつようになったり、貼られていた紙を引き破いたりなど、かつてのアングラ劇みたいに展開。が、不思議な透明感があります。
このへんで八巻氏はフンドシ1つになり
そこへmioさん赤いろうそくに火をつけて八巻氏の裸の体にたらーり。
ううーっと苦痛の声を上げる男。
それを陶然と見下ろしている女。あどけない顔であるだけにかえって怖い。
これは心を病んだ人たちが見た幻想の地獄なのか。
狂気をもってしか現実の狂気を訴えることは出来ないということか。
「ドグラ・マグラ」が発表されたのは1935年(昭和10年)
作者はこの数年後の現実の狂気・現実の地獄を予見していたのか。
そして今、この舞台が予見しているものは…妄想が広がります。
そんなパフォーマンスの合間に
八巻氏のピアノ、show君のクラリネットの生演奏で
mioさんのダンスがあります。
曲はビゼー「カルメン〜第3幕への間奏曲」や、
ドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」など。
おどろの世界の後だけに、すなおに心にしみてきます。
そして終わり頃
ドボルザークの「新世界より〜家路」がありました。
夕方のような赤い照明の中で、
一日の仕事を終えて暖かい我が家に帰っていくような、
家では夕げの仕度をしているような。 泣けます。
そんなふうにして最後はあたたかく終わります。拍手。
ここで八巻氏がご挨拶。そして
アンコールということで2曲スペシャルメドレーで、
同じく八巻氏のピアノ、show君のクラリネットで
最初は中島み○きの「糸」
mioさん裸身の上に薄い紗のようなものを軽くまとって、クラシックバレエのように踊ります。拍手。
次はさいごの曲。ベットミ○ラーの「Rose」
ここでmioさん白いバラの花を1本持つと、まるでギリシアの女神のように。そして
静かに踊りながら会場内を1周します。
至近距離で見ると、生々しさと神々しさ。
ストリップとはまた違ったエロスを感じました。
そんなふうにしてダンスが終わります。拍手。
八巻氏、改めてご挨拶。
そしてmioさんに告知を促すと
mioさん「12月11日はデラカブで、12月18日は大久保のMKスタジオでイベントに出ます」とのこと。
show君は「告知は特にないですが、こういった様々な活動もしていきたいと思っています」それぞれに拍手。
八巻氏「このあとよかったら出演者と歓談する時間があります」とのこと。
私を含めて残った人たちが出演者の皆さんと色んなお話しができました。
会場を出たのが9時少し過ぎ。
外気の冷たさが心地よかったです。
- 12/22 23:47
- 見物人