関東速報
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● 「浅草艶絵巻 8月公演」レポ 

2019年8月14日(水)浅草リトルシアターに行って今月の艶絵巻(8/14〜17)の初日を見てきました。
初登場のKuko(くこ)さんが加わり個性豊かな4人、真夏の夜を艶やかに彩ってくれました、以下、簡単に。

1「戦争と一人の女」坂口安吾原作。出演:Otoki
終戦の日の週にふさわしい演目です。
空襲警報のサイレンの音、赤いライト、その中に立つ白い服の女。
何回か見た演目ですが、これまでと全く違った印象です。女の姿が
戦争資料館のろう人形のように見えてきます。しかし、その台詞は
昨今のステレオタイプ化されたマスコミの論調とは全く違っています。
そして赤いライトの時は戦争(空襲)の時、
白いライトの時は自身の性と愛について、それぞれいい子ぶらない生の声を
ぶつけてきます。やがて月光を表すような淡い緑のライトの下で、
「男の覚悟というものが、こんなに可愛いものだとは」と静かに語ります。
今の日本に、こんな「可愛い」男がはたして存在するのか…

2「O・YU・KI」永井荷風原作。脚本・演出・出演:美里流李(みさとるり)
流李さん3月以来の出演です。今回は「濹東綺譚」(ぼくとうきだん)を、時代を戦後に移し、お雪の視点から描きます。
(注)「濹東綺譚」(昭和12年刊)永井荷風の小説。荷風の分身と思われる作家と、東京・向島の
玉の井の娼婦お雪との出会いと別れを描いたもの。

照明がつくと流李さん粋な着物姿で登場。独り芝居になっていきますが、
当時の玉の井の女らしい語り口調、身のこなしなどがリアルに表現され、観客は荷風の世界に引き込まれていきます。
知り合いの誰々さんが、誰かと駆け落ちしたとかしないとか…
でも一人ぐらい幸せになってほしいじゃないですか…
友だちのことを語りながら、お雪は自分のことを言いたい、のが伝わってきます。
ラストは「先生、私たちのこと書いてよ」と言い、踊りになります。

3「キリギリス」太宰治原作。出演:Kuko。 
文芸作品が続きます。照明がつくと初出演のKukoさん、洋装で舞台中央に立っています。そして
「女というものは業の深いものでございます…」と言って
すぐダンスになります。長身を生かした切れの良い、独特のリズム感くねくね感のダンス。
やがて浴衣姿になって舞台に正座すると、
「お別れ致します」
以下、原作「きりぎりす」に沿った独白。
売れない孤高の画家だと思って結婚したのが売れてすっかり俗物になってしまった亭主に愛想を
つかして出ていく妻。これも太宰でないと書けない話ですね。
語り終わると、コオロギ(昔はキリギリスと言ったらしい)の鳴く声。暗転。
これで終わりかと思っていると、照明がついて
Kukoさん浴衣姿でギターの弾き語り。迫力のボーカル。なかなか多才な人ですね。

4「妖婦お定」出演:朱魅、森健太郎
今年1月の再演ですが、夜嵐おきぬ、高橋お伝、ホテル日本閣殺人事件の小林カウ、来月は杉村サダメと、朱魅さんの妖婦シリーズますます磨きがかかってい
ます。が、妖婦を単に妖婦ととらえるのではなく、実はどんな女性も持っている怖さ可愛さエロさを犯罪史上の人物を通して描き出しています。時にシリアス
に、時にコミカルに。
さて物語は戦後まもなくの浅草。あの(2・26事件の年の)阿部定事件を芝居にしようとしている作家の長田幹彦(森)と、
主人公役に抜擢された阿部定自身(朱魅)との会話。
コミカルな中に、芸能論・性愛論が展開されていきます。
芝居の後は朱魅さん宇崎○童の「紅○」に乗ってしっとり踊ります。

なお艶絵巻、9月は前半9/11〜14が
明烏(水月涼)・如実知自心(黒崎優)・杉村サダメ(朱魅)with cast 山口六平 鈴木ちさ 森健太郎、
後半9/18〜21が
十五夜 月光に舞う(加瀬あゆむ)・淪落(川合瑞恵)・The life of others(初咲里奈)with cast 森健太郎
だそうです。
また8月24日(土)・25日(日)には同じく浅草リトルシアターで
「浅草幻想vol.1〜夏の終わりの蟲のこゑ〜」として、艶絵巻の作品〜春琴抄(坂内琴音・早見蛍)・戦争と一人の女(つちやまい)・The
eternal
life(坂内琴音・早見蛍)・ホテル日本閣殺人事件(光子・つちやまい・森健太郎・山口六平)〜を別の切り口で上演されるようで、これも面白そうで
す。

- 08/18 12:48
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