関東速報
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●「浅草艶絵巻 4月公演」レポ 

2019(平成31)年4月19日(金)浅草リトルシアターに行って艶絵巻(4/17〜20)の3日目を見てきました。今回は初出演の2人を含め女優陣
4人とも現役か元踊り子さんで、新作・再演各2作でした。以下簡単に。

1「恋愛の微醺(びくん)」林芙美子原作。出演:美樹うらら
微醺とはほろ酔いのことだそうです。林芙美子のエッセーを朗読劇のように。
暗転の中、モーツァルトのピアノ協奏曲(映画「みじかくも美しく燃え」挿入曲)が流れ、照明がつくと美樹うららさん
白衣姿で(似合っている!)赤いバラを1本持ってにこやかに立っています。そして
「私は恋愛クリニックのウララ・ミキです。皆さんは恋をしていますか?」
と客席に問いかけます。何人かが手を挙げたようです。
そんなふうに始まります。あとは上記のエッセーを読んでコメントを加えながら進んでいきます。読み終えると、
「でも私は刺激的な恋が好き」と言ってニコッと笑って引っ込みます。いったん暗転。
再び照明がつくとウララ先生、舞台中央に置かれた椅子にセクシーに足を組んで腰掛けています。そしてちょっとやさぐれた女性ボーカルに乗って妖艶に踊り
ます。白衣の下の赤い下着が、優等生の心の奥底のエロスのように見えてきます。踊り終わると、人差し指を口にあてて「ひ・み・つ」の合図。

2「the eternl life(永遠の生命)」脚本:山口六平。出演:初咲里奈(うさきりな)、森健太郎
照明がつくと初咲さん、黒いジャンパーに赤いチェックのスカートだったか、で椅子にかけています。
そのあとモリケン氏が白い衣服で陽気に登場、ドクターだそうです。そして二人の会話が始まります。
ここは科学が進歩し、人間が死ななくなり、子供を作る必要のなくなった世界…
SFですが、不思議にすっと現実のように思われてきます。
初咲さん演じる未来少女ミクは200歳、もういっさいの記憶も意識も消したいとか。モリケン氏のドクターは、彼女がそれにふさわしいかどうか診察を始め
ます。
ここから2人、乗り乗りのかけ合いになります。
コミカルなような。それでいて深く、心に響いてきます。
診察の結果が出たようです。
ミクさんの希望は叶えられることに。そしてラストのダンスになっていきます。
今までにない怖さ、そして美しさ。
ふと思いました。人の記憶や意識が消えても、その人のことを覚えている者がいる限り、その人は生きているということなのではないか、もしかしたら意識は
つながっているんじゃないかと。
それにしても初咲さん、初出場なのにすごい表現力ですね。

3「淪落(りんらく)」林芙美子原作。出演:Otoki
作者の終戦直後の短編小説の舞台化。一昨年5月に灯月いつかさんが演じたのを今回は初出場のOtokiさんが上演。
暗転の中、リン○の唄が流れてきます(このあともBGMに銀座カン○ン娘、蘇州○曲、星の流○に、いつで○夢を等々昭和の歌が順不同でいっぱい出てきま
す)。照明がつくと、
Otokiさん寝起きの顔で歯ブラシをくわえて下着姿で出てきます。そして
「私は、家の人たちには無断で東京へ出てきた…」と問わず語り。
華やかな東京にあこがれ、田舎から一人、家出のように出てきて、そこで出会った男と同棲。
ホールのダンサーになり人気者になったり、様々な男たちとの出会いと別れ、そして
子供をみごもったり。
そんなことが淡々と語られていきます。性格的には、
考えるより先に行動してしまう人みたいで、踊り子さんに多いタイプですね。
そんなふうに大量の台詞をごく自然に一人で語っていきます。
そして語りながらお化粧をしていって、少しづつ奇麗になっていきます。
お化粧が終わると、お洒落な黄色いワンピに着替え、ニコッ。
ラストは希望のあるような終わり方に。

4「八百屋お七」出演:朱魅、森健太郎、山口六平
艶絵巻、この季節の定番になった演目です。先月から3人体勢ですが、台詞や演出に更に工夫があったようです。
暗転の中、インストルメンタルで「春よ、○い」が流れ、照明がつくと朱魅さん赤いふりそでで登場、可愛く踊ります。やがて狂ったように。半鐘の音。炎の
ような照明。
やがて曲は静まり朱魅さん一旦去ります。
ここでモリケン氏が着物姿で登場、物語をざっと説明します。そして芝居になると中山勘解由(かげゆ)の役に。お七を捕縛した者ですが、お白洲の場面では
むしろ弁護人に近い存在ですね。
そこへ山口氏扮する南町奉行、甲斐庄(かいしょう)喜右衛門正親(まさちか)が登場。
芝居を最初に見た時はストーリーを追うのに精一杯でしたが、
今回は主役の朱魅さんはもとより男優2人の表情がよく見えてきたように思います。
お七が「私が火をつけました」と言った時の、とまどい。
お七が吉三郎とのあれこれを語る時の、興味津々といった顔、そして
お七が「燃えろ燃えろ!」と狂喜の声を上げる時の、沈痛な顔、などなど。
苦渋の選択をしなければならなかった奉行。
結果を受け入れることのできない中山。
芝居の最後にお七と奉行が並んで空を見上げる場面は、もう超えているって感じですね。
そしてお七、辞世の歌
 世のあはれ 春吹く風に名を残し 遅れ桜の 今日散りし身は
を詠み、ここで「春○、来い」の歌が流れ、
朱魅さん改めて桜吹雪の下で踊ります。
この八百屋お七の物語は、次の令和の時代になっても語り継がれていくことでしょう。

- 04/30 11:54
- 行った人


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