HEADLINE

●SWEETな野郎 in カナダ

バンクーバーダウンタウンへの入り口、橋を渡ってすぐの所にCECILはあった。
やや古ぼけた建物、外には怪しげな雰囲気の男が、入ってくる客の車を駐車したり、
客の案内をしたり、急ぐ風もなく淡々と立ち働いていた。
その風景から、日本で嗅ぎ慣れた独特の「臭い」を久しぶりに感じて、俺は連れに
気取られないように口の端でニヤリと微笑んだ。

階段を上る時に壁際にいる浮浪者が鋭い眼光でこちらを見る。とりあえず目を合わせ
ないようにして入り口へ向かう。ドアを開けると中から強烈な香水の香りとビートの
効いたサウンドが漏れ出してくる。

受付の娘に、5カナダドル(400円程度)を支払い、バドワイザーを受け取ると
奥に進み、ステージからやや離れたテーブルに腰を落ち着ける。座ってあたりを
見回すと、今はステージの切れ目の休憩時間らしく、ステージの上には誰も居ず、
音楽だけが流れている。あちこちで店の女が客とにこやかに話しているが、さしずめ
商談の真っ最中というところか。

こちらも連れと話していると、女がにこやかに近づいてくる。「一緒に踊りませんか?」
プライベートダンスのお誘いだ。「後でね」と答えて軽くかわす。女は軽く肩を振ると
さっさと次の席に向かっていってしまう。

しばらくして、DJのアナウンスが入り、ショーが始まる。長身のダンサーが現れ、
ステージの両端の木製、金属製のポールの間を独特の足さばきで歩き回る。
ときどき金属ポールを使って、アクロバティックな技を披露する。さぞかし筋力が
あるに違いない。俺と力較べをしたら、俺の方が絶対に負けそうだ。

ダンス2曲の後で、日本で言うところのベットになるが、ここでも強烈な腹の底に
響く音楽を使っている。ステージ全体を通して、強烈な香水と音楽で、長時間いたら
くらくらしてきそうだ。かぶりつきの金のありそうな中国系の客がベット中の踊り子
のガーターにチップを挟んでいる。ありがちな風景だ。ベットでもポール技を見せて
くれる。見ていると曲技団のように体が柔らかい。ダンサー全員ある意味芸人として
非常にレベルが高い。よほどレッスンしてるんだろう。

ベット中も客席の若い一団がやたらと盛り上がる。拍手と歓声が鳴り止まない。
ダンサー達も笑いながら、賑やかな方へ寄って行って、よく見せてやっている。
微笑ましい風景だ。

全部で5人のダンサーが一通りショーを終えると、また長い休憩に入る。ここで、
かぶりつきが空いたのでそちらに移動する。ところが、かぶりつきだと思ったら、
実は噴水の前だった。季節によっては噴水を使ったショーもやるらしい。

そこで2人くらいショーを見たところでタイムオーバー。明日は日本に帰るため、
ここらで宿に帰らないといけない。名残り惜しいが席を立つ。劇場を出るとその辺に
路上駐車してある車の窓ガラスがやたらと割られている。やっぱりこの辺はやばい
地域らしい。耳の奥の興奮のかけらをカナダの冷たい夜気で冷ましながら、さっさ
と退散するとしよう。

http://www.ainews.com/story/2447/

- 02/13 05:30
- SWEET


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