新宿ニューアート
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●HIKARUさん 2015-04-16 (4th) stage

どんな事情なのかは知らない。置屋の軒先に乳飲み児を託す母親の胸中を慮る事は出来ない。身に纏う暗い色の着物は、闇に紛れる為‥なのだろうか。踵を返して二歩、三歩。照明が落ちて何も見えなくなる。

再び照明が灯り、取り戻された視界には様々な色彩が咲き乱れている。オレンジと緑の着物。裾に青×白で描かれたチョウの図案。青で抜かれた衿。グリーンメタリックの袖。薄ぼんやりした闇を背景に艶かしく映える朱色の格子戸から手を伸ばし、道ゆく男達の気を惹こうとする若い遊女の姿が目に飛び込んでくる。

朱色の格子戸は、全部で三枚。真ん中を手前に、両サイドを引いた位置に配する事でその隙間から「出入りする」表現が可能になる。籠の中の鳥は大空へ飛び立つ事が出来るのか。ステージ前半で掛かり、その後も折に触れて繰り返し流れる「この空を飛べたら」が何とも切ない。様々な体位の変遷で魅せるエアセックスも花魁の絢爛豪華な佇まいもどこか物哀しく‥淡々と演じられる無声劇に、観客は、ただ、見入るしかない。

ストリップでしか出来ない‥そしてストリップのステージで今まで誰も試みた事のない表現。この演目が仮に他の誰かに引き継がれたとしても、決して彼女の様には演れないのだ。

自分がこの作品を観る事が出来たのは、これ一度きり‥。正真正銘「一期一会」のステージとなった。

- 07/18 03:55
- くるりん


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